「白熱教室」という番組をご存知でしょうか。日・米・中の最高学府の学生を集めて討論する番組です。
先日のお題がまさに「民主主義とは?」でした。面白いと思ったのは、中国の学生達は「中国は独裁国家ではなく、民主主義国家である」と考えていること。
えええええええ
この子達、民主主義の意味わかってる?
彼等は「欧米式の民主主義」の間違いを指摘するけど、どうやら彼等の民主主義とは多数決絶対主義に見えます。
というか「欧米式」って何よ?
中国は一党独裁のように思われているが、国民の意見を吸い上げるシステムもちゃんとあって、その議論の結果を選択するのが中国共産党である(だから国民はそれに従うべき)。
アメリカでは自由な意見を野放しにしているから暴動が起きる。そこが「欧米式民主主義」の欠陥であり「中国式」の方が優れていると言います。
うーむ。
中国共産党のやることが国民の意見を集約した結果には見えないんだけど。
そもそも彼等は「多数決」が理解できていないようです。多数決とは、多数派が少数派を牛耳るシステムではありません。少数派にも最低限の権利、思想の自由や言論の自由などの基本的人権を保証する必要があるからです。
多数決というシステムが求めるのは、あくまでも最大多数の最大幸福であって、その意味では常に少しの不幸を内包しているのが多数決と言えます。
民主主義とは、少なくとも私の理解では、自由権を含む基本的人権を、全ての国民に漏れなく保証するシステムです。しかし、それでは意見をまとめることができないので多数決の手法を用いることになりますが、そこでは少数意見が隅に追いやられることはあっても排除されることはありません。結果が不完全であろうと、この寛容さこそが民主主義、自由主義の素晴らしいところだと思います。そもそも「多数意見」が必ず正解ではなく、多数決の正解は時代によって変化するものですからね。
そうではない社会、非民主主義の社会、国民の主権を認めない社会では、一つの決定を実行するために政府による検閲や、少数派への弾圧が行われます。これはファシズムです。ファシズムは国家の定めた方針と異なる主義主張を許しません。かつて幾つかの国がこれを行い、結果は誰もが知っている通りですね。
少し前の報道で、ロシアでは「特別軍事作戦」のことを「戦争」と呼んではいけないと言ってその言葉を使う人を逮捕し、それならばと口に出さずに紙に書いて示す人や、あろうことか白紙の紙を掲げる人までもが逮捕される映像が流れました。私は民主主義、自由主義の国に生まれて良かったなあ、というのが率直な感想です。
話を戻して、中国の意思決定プロセスにおいて議論があるとしても、最終的に為政者は強制力を手にするわけで、その強制力によって国民の人権が蹂躙されている様々な現実を見て、どの口で「民主主義」だと言えるのでしょうか。
こんな基本的なところから思想が違うなら、深いところで仲良くするのは難しいかもなあ。彼等に罪はないけれど、中国政府によって歪曲された民主主義は通用しません。もっと勉強したくてもネットは制限されている。そもそも国民が政府主導の教育に染まっている。本当にお気の毒としか言いようがありません。
それだけでも、我々は幸せだ。